今年読んだ本
- Kazuya Komatsu
- 2019年12月30日
- 読了時間: 4分
年末ですね。今年読んだ本を振り返ってみよう。
塩野七生「十字軍物語」1〜4




11世紀終わり頃からローマ教皇の望みをうけて、ヨーロッパの諸侯はエルサレム奪還を目指して、イスラエルに侵入します。十字軍の始まりです。ぼんやりとしか知らなかった十字軍の様子がこの4冊でだいたいわかります。成功した第1次、いろいろな騎士団の設立と活躍、イスラム側のサラディンによる反撃、リチャード獅子心王の活躍した第3次、ヴェネツィアの思いどおりにさせられた第4次、戦わずしてエルサレムを奪還した第6次、ほとんど失敗の聖王ルイの第7次と、4冊一気に読める。
塩野七生「ローマ亡き後の地中海世界」1〜4




ローマ帝国滅亡期からルネサンス時代までに横行した海賊、またそれに対抗するための海軍の話。中世のことも書いてあるが、ルネサンス期の海戦で活躍したアンドレア・ドーリアが出てくるあたりが、息つく暇もないぐらい面白い。その後、トルコのスレイマンとマルタ騎士団の戦いでもう一度ピークがある。マルタ島を大国オスマン・トルコから守り抜いたマルタ騎士団。この辺の書き方はしびれますねえ。
ヤーコプ・ブルクハルト「イタリア・ルネサンスの文化」(上・下)


これは有名な本ですね。
イタリアで起こったルネサンス運動はギリシャ、ローマ時代の古典を復興させる運動だけど、古典の復興は中世でも行われていて、その流れの一番大きなものが、このルネサンス期に起こる。国の統治の仕方、個人という考え方などがそれまでとはかなり変わってゆく。また、航海技術の発達により、世界が広がっていく。
この本は有名なだけに、のちの歴史家からは、イタリアだけ突然、ルネサンス文化が現れて、今までの文化との断絶が行われたように見えるとの、批判もされている。実際は中世の文化の流れの中にあって、ここからがルネサンスという風にはいえないものだ、と。それはそうですね。でも、この本が出た時の衝撃はすごかったんとちゃうかな。これを元にいろいろと修正していける。
ホイジンガ「中世の秋」(上・下)


15世紀のフランスの政治的状況を踏まえながら、当時の考え方や文化を書いたもの。イタリアの15世紀はルネサンス全盛期だけど、その他の地域ではそうでもないんですよね。中世の終わりの時期っていう感じ。タイトルどおりですよね。
これは30代の時に一度読んでいるけど、この前読むと、一部を除いてほとんど忘れていた。2回目というより1回目に近かったかな。でも、中世/ルネサンスの知識(人の名前とか、地名)が少しだけ多くなった今では、結構頭に入ってくる。最後の方、詩と絵画の比較など、興味深く読んだ。細部を克明に描くことは絵画では面白く見えるが、詩ではつまらない、とか。これは詩も絵画も全盛期のイタリアのことではなくフランスのこと。また、中世音楽好きには興味深い、ブルゴーニュ公国で行われた「雉の祝宴」のことも書いてあります。
エラスムス「痴愚神礼賛」

ルネサンス期の大文豪エラスムス。名前は知ってるけど、何を書いた人なのかいまいちわからなかった。これは、当時ヨーロッパで大ベストセラーになった本だそうだ。もう、印刷機が発明されて、手で写さなくてよくなったし、大量に本を作れるようになったので、こんな売れっ子作家が出てくるようになったんよね。でも、今のように印税は入ってこなかったらしいので、本屋(印刷屋)の方が儲かったみたい。エラスムスは貧乏だったとか。
この本は演説など、人前で話す時にどういう風にしたらいいか、の例として書かれているということだけど、あらゆる階層の人を捕まえて、こんな奴がいると、笑い飛ばす内容。途中から、教会関係者や神学者、王や貴族など支配層への辛辣な批判文となっていく。特に教会関係者には相当腹が立っていたみたい。こういうの、150年くらい前のボッカッチョの「デカメロン」にもあったよね。いつの時代も、神を信じないでぬくぬくと暮らしている宗教関係者にはむかついたんですな。割と面白く読めた。途中で古代の哲学者の名前や本がいっぱい出てくるのには辟易したけど。そんなん知らんっちゅうねん。
あと、ル・ゴフ「中世の知識人」「中世とは何か」とか読んだな。
今年もお金がないながらもよく読んでる。
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