この前、ぼつじゅう企画で大竹野正典脚本の「彼方のソナタ」を観劇しました。
役者が、魔人ハンターミツルギ、北野勇作、高瀬和彦、池上和美という半分以上が作る人だったので、そんなに期待していなかった(ごめんなさい!)けど、これが素晴らしかったのです。
ルンペンをしている3人が、生きていくために避暑地の別荘に忍び込みます。
食べるものを探すうちに、この世の中で、ここは孤立している場所だと感じ始めます。孤立しているというか、他は滅びている可能性もあるのです。
仲間のゴンドウは、他人の家に忍び込むことを最小限の悪と考えていて、それ以上の悪徳を行うことを拒みます。スナメリは、自分が可愛がっていたミミズのキョンキョンへの思いを断ち切れません。 その中で一人、現実的に振舞っていたナガスが狂い始める。畑から盗ってきた白菜を自分の家族として扱い始めます。 狂ったナガスは、昔、飼っていた猫のお墓にいて雪で帰れなくなった弟・タダシ(池上さんがかわいすぎる!)を迎えにいくこと、雪の降る中でタダシを無視して家に帰ったということを、タダシに謝っていなかったことを思い出し、吹雪の外に出て行く。亡くなっているタダシとの会話の中で、謝ることをできないままタダシは先に行ってしまう。 僕はこんな話に弱いのです。これを書きながらも涙目になってしまう。
自分の置かれた境遇で出来ないことがいっぱいあるのに、生きるためにしなければならないような事を、本当にやるべきか考えたりすることに焦点を当てられているルンペンもの、人間の最下層に落ちてしまった人が、最後に人間としてやらなければならなかったことをする、というところにグッとくるものがあるように思います。このキャストは最善のものだったなと思います。
ルンペンものは、音楽でも少ないながらあります。
一番有名なのは、高田渡「生活の柄」でしょう。多くの人が心揺さぶられる歌です。沖縄の詩人、山之口獏の書いた詩です。
僕が一番好きなのが、ムーンライダーズ「ニットキャップマン」。
糸井重里の作詞です。
詩の中の「ニットキャップマン」はパチンコ帰りにテトラポットの隙間に落ちた僕を助けて、家にまで送ってくれます。仲良くなっていろんな世俗のことを話していた彼「ニットキャップマン」は突然死んでしまいます。そのことを知って途方にくれるという歌なのですが、これも涙腺崩壊です。 音楽というものは商業的なものであっても、恋した、ふられた、みたいなばかりではないんですね。人間の尊厳みたいな内容にも踏み込んでいます。演劇も同じ。
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