ラテン音楽を聴いていると、あ、これはムード歌謡だ!と思う瞬間に出会う。
ライスレコードが出している、プエルト・リコの音楽集を聴いているとそういうことを思う。
ラファエル・エルナンデスとペドロ・フローレスという二人の作曲家の曲を集めたもので、キューバの歌手が歌っていたり、メキシコの歌手が歌ってたりするものも収録されている。
キューバのノリノリな感じのものではなくて、もっとソフトな歌が中心。それが日本のムード歌謡と近いものを感じるし、その音楽のルーツはこんなにいいものだったのだ、と思わざるをえない。
日本のムード歌謡を昔は嫌いだった。あの湿っぽい曲調、歌詞、雰囲気。
女の人じゃなくておっさんであると思うけど、ウジウジと悩む女性の心情(それは男が勝手に考え出したものなのだけど)を歌い、大人の恋に悩む大人の女の人に「どうしたの?大丈夫だよ。」と声を掛けてあげるかもしれない大人である自分を想像して「こいつは俺に惚れるだろうな」と思う大人な自分を発見して「俺は大人の恋をしているのだ」という自己満足に陥らせるための曲が、日本のムード歌謡なのだと思っていた。こんなのを誰が聴くのか?と。
でもルーツを聴くと、まさかそんな軽薄な曲じゃないだろう、と思うようになった。ムード歌謡はラテンなのだ。そういう風にもう一度聴きなおしてみたいと思う。
歌詞の内容はおいといて純粋に音楽だけを聴いてみると、ラテンだってことがよくわかる。それもかなりな高水準でコピーしている。都会の、かなり洗練された音楽として提供されていたのだ。
そういう日本の音楽のルーツはプエルト・リコにある、と言えるかもしれない。
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