永井荷風って人はフランス趣味なんだって。
でも、江戸趣味な印象の方が僕は強い。
この前読んだ「世間とは何か」に、永井荷風の世間との距離の置き方が独特だというようなことを書いていた。西洋の個人主義を認めつつも、世間にまみれながら深い文化を生み出していった江戸にも惹かれているって。
永井荷風を読みたくなってきた。まず「濹東綺譚」からかな。
と思って買って読んでみる。主人公が夕方から夜にかけて散歩していると、雨が降ってきて、傘の中に芸者が入り込んでくる。あれ?これ読んだことあるな。かなり前にひょっとしたら買ってたのかもしれない。
昔はこの戦前の東京の風景になんの印象も持たなかったけど、今回は面白く読めそうな気がする。「寺島町奇譚」で滝田ゆうの描く玉の井の感じ。もう戦争で焼けてしまって今はない。
「濹東綺譚」の中にも「震災の後新しき町が建てられて全く旧観を失った」という記述がある。
都市はその時代によって姿を変えていく。町並みはその時代とともに記憶の中にしかない。今の自分は、そういう記憶の中にだけある東京に憧れている。こんな感覚は初めてか。
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